2019年08月10日

精神疾患の寛解・回復後、症状消失後の治療ストラテジー   臨床精神薬理 Vol.22,No.8 Aug. 2019

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 パニック症は回復しやすいが慢性の経過をとる精神障害である。発作が消失しても病的不安は長い間残る。そして、パニック症患者は自分の不安を隠す傾向にあり、診察に際しては具体的に問診しないと不安の存在を確定することができない。パニック症の不安が完全に消滅するのには長時間を要する。
 パニック症の主な治療抵抗要因としては症状の重篤さ、併存疾患、養育歴、現在のストレス度が問題となる。また、広場恐怖を伴うパニック障害の回復率は低いという。

確かに貝谷先生の指摘される通りです。当クリニックのある男性のパニック症の患者さんから東京ディズニーランドのお土産をいただいたことがありました。「先生、やっと子供たちを、ディズニーランドに連れていくことができました」。この患者さんは何年も電車に乗ることができずにいたということをはじめて知らされました。診察室では落ち着いており、発作も数年起こしておらず、仕事にも支障を来たしていなかったこともあり、私自身が”かなり楽になった患者さん”と思い込んでいた方です。以後、今まで大丈夫と私が思い込んでいた患者さん達に空間恐怖や不安による生活の支障を必ずチェックするようにしたところ、回復まで至らず、何年も、患者さんによっては十年以上も、ごくごく限定された範囲の中で生活されている方がいらっしゃいました。加えて、これは私の印象ですが、しつこい肩凝りなどの慢性疼痛を伴っている方が多いようです。今では薬物療法、認知行動療法、心理教育、呼吸法や生活指導など根気強く治療を続けていかなければならないと思っています。

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2019年07月26日

うつと発達障害   岩波 明

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 ASDとADHDの症状の見分け方などが参考になりました。発達障害を専門にしている医師の多くは、もともと自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門にしているそうで、そのためある種のバイアスがかかってしまい、診断がASD寄りになる傾向がいまだにあるそうです。現在においては、ADHDの人がASDと診断されて、コンサータ、ストラテラ、インチュニブなどの薬物療法の機会を逸してしまった場合の損失を考えるとADHDなのかASDなのか、あるいはADHD+ASDなのかをきちんと鑑別しておくことは非常に大事なことだと私は思っています。成人においては、ASDは多くて人口の1%、ADHDは5%前後で、ADHDのほうが多く、社会的な認知度も上がってきているため、当クリニックに受診されるADHDの患者さんもここ2,3年で飛躍的に増えています。

 ADHDとASDには見かけが似ている問題行動がありますが、その成り立ちは異なるということがこの本には紹介されており、鑑別診断における留意点にもなると思いました。
1)毎回し忘れる、毎日目にしても気が付かない
 ADHDの忘れ物は不注意からくるものであって、「忘れ物はしてはいけないこと」という認識はあります。ASDの忘れ物は「してはいけないこと」という認識の欠如によるものだそうです。例えば、ASDの人は同僚たちが毎朝タイムカードを押しているのを目の前で見ているのに、自分がそれを必要だと思わなければ無視をしてしまい、周囲には不注意によるミスに見えるそうです。タイムカードを押すという行為が社会的に重要という認識に欠けているのです。
2)話し出すと止まらない
 ADHDの場合は「思いついたことを言わずにはいられない」衝動性が原因だそうです。ASDは、他者に対する無関心、配慮のなさが原因で、目の前の相手や周囲の状況に構わず話したいことを話してしまいます。
3)なれなれしい
 ADHDの人は元来、人懐こいところがあり、あどけない行動をとることが多いけども、関係が「長続きしない」そうです。ASDがなれなれしい場合は「他社への配慮の薄さ」、つまり他人との距離感がわからないためだそうです。

 当院を受診する成人の発達障害の患者さん達の世代は、ADHDやASDの概念や治療法が確立されておらず社会的な認知もされていない時代に子供時代を過ごしてきました。患者さん本人の知能と自助努力で学生時代を乗り切ってきたのです。人懐っこさやあどけなさに隠されてしまっている、彼ら彼女らの並々ならぬ努力と孤独に思いを馳せらずにはいられません。


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タグ:発達障害 ADHD
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2019年07月25日

発達障害グレーゾーン  姫野 桂

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 発達障害の傾向はあっても診断がおりない人たちの悩み・血のにじむような努力が赤裸々に紹介されています。自らもASD特性を持つハタイクリニック院長西脇俊二先生は、「診断基準未満」でも、困っていれば発達障害でいい、本当に必要なのは「(問題の)解消法」を教えられる医師とおっしゃっています。まさにその通りと私も思います。

 西脇先生は直接お会いしたことはありませんが、私の大学の先輩です。確かにICD-10やDSM-5で拾いきれない発達障害グレーゾーン(グレさん)でも社会生活や個人生活を維持できないくらい困っている人達はたくさんいます。加えて同じ患者さんに対しても医師によっては診断が異なることもあります。将来、診断基準のバージョンアップにあたり、グレさんの扱いや医師による診断のばらつきをどうするかは、問題提起されるべき案件ではと私は思っています。

 グレーゾーンの人は働けている人が多いですが、それでも「何をどうしたらいいのか」がわからず、常にギリギリの状態疲弊しています。西脇先生は「自分に期待しない」「他人に期待しない」「自分は努力をする」という3点にエネルギーを注ぐべきといいます。

 「自分に期待しない」「他人に期待しない」「自分は努力する」は前向きなアドバイスであり、マインドフルネスな働き方に通ずるのではと私は思いました。いい言葉です!










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タグ:発達障害 ADHD
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